フライングガールズ

フライングガールズ ~高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦~

フライングガールズ 高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦
「フライングガールズ ~高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦~」

この本は一言でいえば「女子ジャンプの歴史」を書いた本です。女子ジャンプの歩みを人物にスポットに当てて書いています。

タイトルにはソチ五輪を迎えメダルの期待される高梨沙羅が含まれています。(出版は2013年冬・ソチは14年2月)その為、高梨選手の競技キャリアやインタビュー等に紙面を割いて紹介してますが、メインとなる歴史の部分は女子ジャンプのパイオニアとして第一線で活躍した山田いずみさんとジャンプへの取り組みを紹介する形となっております。

ノルディック・スキージャンプ女子という種目がない時代。多くの女性ジャンパーは中学・高校に進学すると他の競技に転向していく中、山田いずみさんや葛西賀子さんが男子に交じり「女子もジャンプができる」ということを周囲に認めていく孤独な戦いを始めます。

周囲からの「女子がジャンプ?できるの?」「ケガでもしたら危なくて責任が持てない」という声。こういった声を乗り越えて女子でもジャンプができるということを次第に認知させていきます。

スキー女子ジャンプはソチ・オリンピックで初めて正式に種目と認可されます。花火で言ってみれば4年に一度の盛大な打ち上げ花火です。そういった成果は女子ジャンプという種火を消さないように一生懸命灯し続けていた偉大な先人ジャンパーの歩みがあってこその成果です。

また、ジャンプへの障害は競技その物だけでなく、生活(金銭)との両立という困難にも直面します。遠征には費用も掛かりますしスキー板やウェアなどの道具代も出費となります。その為の資金を稼ぐとなるとジャンプを練習する時間を割かなければならず、それは競技結果の悪化に繋がるというわけです。(茂野選手の居酒屋でのアルバイト話も泣けます。)

特に金銭面での困難は筆舌しがたいこともあり、全日本の渡瀬弥太郎コーチは競技から離れて函館で「イカ釣り漁師」になり選手へ仕送りをする為に船に乗ろうとする程の非常事態になります。(乗る直前に無事に支援企業が見つかる。)

こういう苦しい時代を経て女子スキーの国際大会も開かれるようになり徐々に世間で女子ジャンプという競技が認知されるようになります。

現在の女子ジャンプがこういう歴史を歩んできた事を知れば、競技により一層強い思い入れをもって観戦できます。女子の有力選手一人一人にも個別にインタビューをしてますので選手個人を知る貴重な機会です。

読み終わった後に女子ジャンプを開拓していったパイオニアの先人たちに敬意とありがとうと言う感謝の言葉を捧げたくなる。そんな気持ちが一杯詰まった素敵な一冊です。

(2015/04/08)

 

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