2018/02/12 @平昌(大韓民国)
試合結果はこちら
http://medias3.fis-ski.com/pdf/2018/JP/3097/2018JP3097RL.pdf
高梨沙羅、伊藤有希が人生の目標としてきたオリンピックでの金メダル。いざ本番当日です。
★試合全体について
心配された天候ですが、男子と違って風はそこまで大きな問題にはなりませんでした。ただし、ルーレット的な要素を持っていて明らかに一定の割合でババをひく選手が登場することは試合中から明白でした。
ゲートはオリンピック、世界選手権のお決まりの高ゲート設定(これがフォークトの強さの秘密の一つ)ではなく足への負担からヒルサイズ付近への着地を避ける設定にされました。とてもよかったと思います。
★岩渕香里&勢藤優花
オリンピック初出場組ですね。勢藤選手は緊張していたのか2回目は失敗のジャンプ。日本ラウンンド以降、あまり調子が上がらないのか、得意な台ではないのかわかりませんが、結果がでませんでした。
昨年のプレ大会でもヨーロッパの上位陣が軒並み参加しなかったので「これは表彰台あるか?」と思ったのですが結果5位だったので相性もあるのかな~と思いました。
でも、一番伸びしろがある選手。北京に向けて期待大です。
岩渕選手は1回目11位。これは入賞あるかも!!と期待してみたのですが、2回目は明らかに追い風で叩かれて距離を伸ばせない感じでした。ちょっと不運だなという感じでした。
でも1回目で52点の飛型点を出して今後に繋がるジャンプだったと思います。今シーズンは着地が大幅に改良されています。得点にまで結びつかないですが平均17.5で52.5なのでまずはそこですよね。
★外国勢選手
普段通りといった感じでした。シュトラウブがザイファルト以上の上位に入りました。そしてドイツは全員10位以内という順位です。凄まじい結果です。ドイツは何を強化したのかな・・・・?
ドイツは昨年凄い停滞したんですよね・・・なんでしょうかね・・
ただし、フォークト選手は5位と本番に強いという神通力が解除された模様です。まあ当然ですね。
個人的には7位のクリズナーが印象に残るジャンプでした。前にも指摘しましたが、スロベニアのプレフツ兄弟の三男であるプレフツ3号ことドメン・プレフツそっくりの顔を前に出す攻撃的なジャンプでした。
これはドメン2号の称号を与えてもいいんですかね?という感じです。クリネツはいずれ表彰台の真ん中に立つ選手と言われてますが、彼女より早く表彰台の真ん中に立つ日が来るかもしれません。ただ、好不調の波が激しそうなジャンプスタイルです。
イラシコ姐さんは復帰間もなくですしこれで大健闘ではないでしょうか。前回の優勝が異常だっただけです。しかし、彼女になにか称号を与えたいです。ソチでフォークト選手に負けたのが悔やまれます。
★伊藤有希について
風ですね。今回追い風を受けた選手は全35名中で8名だけ。その内2回も追い風なのは伊藤選手だけでした。35名中いちばん不運な選手でした。ちなみにトップ10で追い風だったのは彼女だけです。
また、課題であったアプローチの速度ですが、今回の試合では他の選手と一緒の速度です。大幅に改良が見られたというか、平均から気持ち遅いぐらいに修正されていたので助走の面からはかなり期待が持てたと思います。
ただ、踏み切りのタイミングが遅れていたのもあったのでね・・・北京でこの雪辱を晴らして欲しいと思います。
★高梨沙羅について
色々ゴシップ記事などもある中で銅メダルを確保しました。彼女は周囲から金メダルを取ることを当たり前の既定路線として期待されている中での勝負でとても苦しかったと思います。
プレッシャーに弱いと言われてましたが、メダルが掛かった2回目のジャンプでは見事なジャンプを決めました。私はテレビを見ていてちょっとブルッと震えてしまいましたし、これで銀はいけるだろうと思いました。
彼女に関してネガティブなことが色々言われてますが、あのジャンプは天性の才能に日々のたゆまなく辛い練習を続けてきた努力の結晶の様なジャンプだったと思います。
プレッシャーに弱いとか、チャラチャラして勝てなくなったとかそういった周囲の言葉をスッキリと吹き飛ばす素晴らしいジャンプでした。
銅メダルが「おめでとうございます」なのか「残念でした」なのか「最低限の結果を確保した」のかわかりません。ですがソチ後に重く重くのしかかっていた呪縛の一つがこれで解けたのではないかと思います。
私は言わせて頂きます。
おめでとうございます!!
技術的に言えば飛型点が18点を取れたことが大きいかと思います。今シーズンに入ってテレマークが大きく改善されてきたことは殆ど触れられていませんが、17点台を取っていた時代から一皮向けたようです。
距離はダントツだけど着地が苦手っというイメージから脱却できそうです。あと1シーズンあればもっと着地は改良されたと思うので勿体なかったと思います。
★ルンビとアルトハウスについて
ルンビの恐ろしいのは1回目のジャンプが彼女にしては失敗のジャンプあったことです。そして2回目のジャンプではアルトハウスから更にゲートを22へ下げてヒルサイズ超え。ヒルレコードですね。金メダルに値するジャンプでした。おめでとう。
アルトハウスはラッキーな部分も多かったと思います。前日までの練習の結果では調子も上がらない日もあって2位が確定されていたわけではなかったと思います。
高梨選手がWFが -4.7 -2.0 という数値でしたが、彼女は-9.8 -9.0とこの試合で一番風に恵まれた選手でした。
風の数値が逆であったらメダルの色が逆であったかもしれません。そういった意味で運が良かったとも言えますが、もちろんプレッシャーの中でちゃんと結果を出した彼女の実力も褒めてあげたいです。
★試合後について
試合後に行われた岩渕選手と伊藤選手のインタビューが印象的でした。
岩渕選手は高梨選手が着地をして飛び終えた瞬間走り出して彼女に抱きついてました。日本勢以外ではW杯で度々見られる光景でよくノルウェー勢がルンビを待っていたりします。しかし、日本に関して言えばこれまでは見られなかったことなので非常に珍しいシーンです。
岩渕選手はインタビューで初めてのオリンピックでの自分の順位やジャンプの内容、そして応援して下さった人達への感謝を述べる段階にはいって万感胸に迫るものがあったのか思わず涙を流してました。
ジャンプというのは本当に多くの人に支えられているんですね。競技の為のスキー板やジャンプスーツにしても多くの人が彼女のために最高の設定になるように仕上げてますし、板も毎試合ごとに専用のワックスマンの人が最高のコンディションになるようにワックスをしています。それに地元の北野建設や松本大学など多くの関わりある人達に支えられています。
ですからそういった人達への気持ちが溢れて涙という形になったのでしょう。
もう一人、気になったのが伊藤選手です。いつもどおりの受け答えがしっかりした話し方でした。4年前と違ってW杯で5勝もして今年も総合で4位につけメダルも十分取れるまで成長した中での9位でした。
インタビューに来たのが一番最後で、ちょっと泣いた後の様な顔つきでした。きっと心が落ち着くまで控室にいて落ち着いた状態になってインタビューに来たんだと思います。
涙をボロボロ流しながら悔しさを滲ませながらもちゃんと感情をコントロールした素晴らしい受け答えでした。インタビュアーが「伊藤選手を中心に・・・」などトンチンカンなことを言って「中心は私じゃないんですけど・・・」と答えたり見ていてかわいそうでした。
せめて北京があるので北京ではリベンジを期待してるとか、もっと伊藤選手の側の気持ちになってインタビューをしても良かったと思います。
以上が試合の感想になります。
数日中に試合の分析をした新聞の記事の紹介や自身の感想を少しまた書いて見ようと思います。